落雁



□ □ □



目を開けてすぐに見えるのは、真っ白な天井。
あぁこれ、見覚えがある。
以前にもお世話になった、病院だ。

体が動かないので目だけを動かす。
あたしの左側に点滴が見える。
これって針が今あたしに刺さってるってことだよなぁ。怖いなぁ。

そのまま視線を下の方に動かす。と、吊ってある左足が見えた。
真っ白な包帯でぐるぐるになっていて、足の形が少しもない。
もちろん、動かなかった。

「あら、弥刀。起きたのね」

入ってきたのは母さんだった。

「…母さん、司は、」

そう口にした時、あまりにも自分の声が枯れていたので、思わず笑ってしまった。
笑うとずきずきと体が痛む。

「なにその声。男みたい」

母さんも笑う。
恐らく、喉を使いすぎたのだろう。

「あんたほんとに頑丈ね〜。車にはねられたんですって? 弥刀の自転車がうちに帰ってきてねぇ、あたしびっくりしたわ。ぺしゃんこだったもの」

母さんはベッドの横に丸椅子を出して、そこに腰を落ち着ける。

「火緋は全滅したわよ。勿論、司1人で。そうそう、辰巳さんが司にそんな無茶言ったのよ〜? でもやってのけちゃうのね。びっくり。あそこのマンションに救急車が集まってたんだから、もううるさかったわよ〜」

すごいわね、司。と母さんは笑う。

全滅って、何だろう。ひんやりと背筋に寒気が走る。

「あんまり大きな声で言えないけどね、麻薬組織だったの、火緋って。元々辰巳さんもあそこを潰そうとしてたんだけど、あんまりにも年齢層が若いってのと、大きすぎたのとで手を出せずじまいだったのよね」

声を潜めて母さんは言った。

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