落雁
ライバルが弱った
□ □ □
「…」
あたしは馬鹿なのかもしれない。
こんな寒空の中、制服1枚でくるんじゃなかった。
セーラー服のスカートの裾を掴んだ。
持っている紙切れを握り締めて、あたしはそこをうろついた。
どうしたものか。
数分間、そんな事を繰り返している。
あたしが目の前で立ち往生しているここは、神谷司の自宅であるマンションだ。
父に聞いた住所を辿って、電車を乗り継いで来たここ。
昨日までは、風邪でも引いてたらせいせいするとか思っていたのに、いざそう考えると罪悪感があたしを襲った。
そして、見舞いでもいってやろうかなと言う軽いテンションで、ここまできてしまった。
あいつが風邪を引いている根拠も何もないけど、そんな単純な考えで来てしまった。
あんなに神谷を蔑んでいたのに、学校が終わり部活を休んでまで来てしまったあたし、すごい恥ずかしい人じゃないか。
いや、でもこれはあたしの責任だ。
もしあいつが風邪を引いていたら、何かお詫びをしないと。
さっきスーパーで買った果物が入っているレジ袋を持ち直した。