落雁

「起きてるよー」
「林檎くらい食べられるよね?」
「…うーん、まぁ…」
「この家、体温計くらい無いの?」
「あ、昨日買ってきた」

皿を机に置いて、神谷が指さす方を見る。
まだ使ってなさそうな新品の体温計があった。

「あるなら使えよ」
「だって、熱があるのは分かりきってたし」

その体温計を取り出して、神谷に手渡した。

その間にあたしはキッチンに水と薬を取りに行く。
よく考えてみると、必要最低限の物しか無い家だ。

無駄な調理器具はないし、コップも1つだけしか見当たらない。
家具だって無駄な物が無いし、随分シンプルだ。

あいつも結構苦労しているのかもしれない。

「何度だった?」
「39度」
「うわあ」

まだ鳴り終えていないのに、勝手に体温計の電源を切って、枕元に置いてしまう。
てことは39度以上あると言う事か。

「あたしの風邪より酷いね」
「弥刀ちゃんは頑丈だから」
「神谷が貧弱なだけだ」

林檎が乗っている皿と、フォークを差し出す。
ちらりと神谷がそれを見た。

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