落雁
「お前の家は、本当必要最低限だな」
「それほどでも」
「褒めてない」
制服の胸ポケットに入れていた携帯を見る。
そんなに時間は経っていない。
いつもなら、まだ部活をやっている時間帯だ。
「まぁ、大丈夫かな」
携帯をしまって、自分も手掴みで林檎をつまんで食べた。
「まぁ、はしたない」
そうふざけて言う神谷の口に林檎を押し込んだ。
甘いのと酸っぱいのが口の中で広がる。
ほっぺの辺りがきゅっとした。
「弥刀ちゃん、ごちそうさま」
「もういいの?」
「うん。お腹空いてないし」
あたしは机に皿を置いて、代わりに水の入ったコップと薬を手に取った。
「神谷、薬。これくらいは自分で飲めよ」
「分かってるよ」
ゆっくりと、神谷は体を起こした。
だるそうに壁に背中を預ける。
あたしから薬とコップを受け取り、それを口に含んだ。
水を飲み干して、はぁと溜め息をつく。
「…疲れた」
「だろうな」
空になったコップを受け取って、机に置く。
あたしは立ち上がった。
まぁ、これで看病と言う任務は達成したであろう。