落雁
だけど、僕はこの場所がすきでたまらない。
何も気にしなくてもいい、自分を出せる、特別な場所。
僕に似ている仲間も居るし、話の合うやつも居る。
「…でも、こんなに人が増えちゃうと、つまんないなぁ。別にいいけど」
「それは俺も思ってたところだ。まぁ、あいつらを見捨てる事なんてできねぇよ」
「そうだよね、レイジは昔から優しい」
でも、むかしの方が楽しかったかな。
「もういいや、あの子連れて帰ろうかな」
「おう、無理すんなよ」
僕は立ち上がった。
名前も知らないその子に近付くと、まだ顔が子供みたいだった。
屈託のない笑みで僕に顔を向ける。
「うちが寝てあげようか?」
「ふふ、僕もそう思ってたところ」
ここに居る子はみんな馬鹿みたいに気が強い。
ただ、弥刀ちゃんよりは強くないなと僕は思う。
その子の肩を抱いて、マンションを出た。
冷たい風が体を襲う。
寄り添うその子が、ぼくの虚しさを一気に引き立てた。
ぼくの、ひみつ。