落雁
あたしは素足にべっとりとくっついた細かい砂利を払って、家に入った。
そのままハイソックスを履く。
「うすみずいろ」
真横で声がした。
この声は。
「司」
見ると、少しはなれた所に学ラン姿の司が立っていた。
朝だからか、目があんまり開いていない。
「ねぇ、うすみずいろ」
「…なにそれ」
靴下を履き終わった左足を下ろす。
「なにって、今日の弥刀ちゃんのパンツ」
は、と気付いた。
その瞬間には、あたしは司に襲い掛かっていた。
「変態!」
「違う、今のは弥刀ちゃんが見せ付けたんだ。僕はそれをたまたま見ただけ」
「見せ付けてない!!!」
あたしの華麗なパンチを司はひらりとよける。
こいつは本当に、へらへらしやがって。
もう、いい。こいつに構っている時間が無駄だ。
右足だけ靴下を履いていなかったので、立ったまま履く事にした。
目の前では司が欠伸をしている。
「そうだ司、あれから部活に顔を出していないじゃないか」
「…部活?」
司が首を傾げた。
「いやだってお前…ボクシング部に正式入部したじゃないか。この前、入部届を先生に提出していただろ」
「あぁ、そういえば」
思い出したかのように、司は笑った。
あたしはこいつの、こういう中途半端なところが嫌いなんだ。