落雁

「…そうやって根性が無いから、何事も長続きしないんだぞ」
「根性無いとか、ずばっと言うね弥刀ちゃん」
「あぁ言うよ。あたしはお前を認めない!!」

けらけらと司は笑う。
寒いから中に入ろう、などと言って大してあたしの話は聞いてなかったようだ。


「部活…ねぇ。あんな部活のなにが楽しいの?」
「あんなって…。みんな、いいひとだし。たまに行けるジムが魅力的なのもある」
「ジムって…」

司が笑い始める。
こいつは基本、笑っているかふざけているかのどちらかだ。


「ねぇでもさ、弥刀ちゃんが“いいひと”って言ってる人は、男なんだよ?」
「そうだけど」
「いつ弥刀ちゃんを襲うのか分からないよ?」
「襲わないし、襲われない。だから、みんなはいいひとだって。それにあたしは弱くない」

司が首を振って、苦笑した。
若干馬鹿にされたような気にもなった。

すっと襖が開き、甚三が入ってきた。

「お嬢。ここに居たんですか」
「うん。サブローと練習しようと思ってたんだけど、あいつだめだなぁ」
「…また新人いびりですか」
「なんでみんなあたしを悪者にしたがるんだよ!」

司は笑っている。
きみがやんちゃすぎるからだよ、と呟いたのは聞こえないふりをして。


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