相思花

春は温かくて、流れる風が柔らかくて。
路を染める薄紅色に心が弾む。


桜がとても綺麗。


感嘆の息をついたその時。


ーーーペチン


「痛っ……」


木刀で軽く額を叩かれ、顔をしかめる。


「集中しろ。」


叩いた主はそう言って厳しい顔をしている。

彼の名前は斎藤一さん。


「あらら……一くんも女の子相手に手荒だね。」


と言って私の頭を撫でるのは沖田総司さん。

二人は私が所属する壬生浪士組の組長だ。


「ちょ、沖田さん!
女の子とかおっきい声で言わないでくださいよ。」


そして私は生川羽衣。
女人禁制のこの組で唯一の女で、色々と事情があってこの組にいる。


「ん?
あぁ、そっか鬼さんにバレたら怒られちゃうもんね。」


そうですよ……て言うか笑い事じゃありません!


キッと沖田さんを睨み付けた。


「総司、副長の名前は鬼ではないと何度言っ「あー、ハイハイ。」


あ、適当に流した。


「一お母さんは厳しいね、羽衣ちゃん。」

「俺はお前の母ではない。」


沖田さんと斎藤さんはなんと言うか……性格が真逆。
生真面目な斎藤さんに対して沖田さんは自由人。

二人のこのやり取りは日常茶飯事だ。


「一くんは頭が固いなぁ。もののたとえだよ、たとえ。」


……そろそろ退散しようかな。


二人のこのやり取りは意外と長引くから付き合っていたら日が暮れてしまう。

私は道場を後にした。
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