今昔狐物語
楽しそうに話す嵐華。
水真馳も自然と笑顔になる。
「相変わらず、姉上は人の子が好きですね」
「良かろう?子供は可愛い。また麓の村にでも忍んで行こうかの」
「嵐華様っ」
阿多羅がたて終わった茶を水真馳の前に置きながら、咎めるような声を出した。
「わかったわかった。阿多羅が嫉妬するゆえ、当分控えようぞ」
「別に、嫉妬では…」
上から目線で笑われて、阿多羅の頬が熱を帯びる。
からかわれて悔しいが、弄られて嬉しいような、恥ずかしいような…。
阿多羅が微妙な心境を噛み締めていると、水真馳が不意に口を開いた。
「麓の、村…ですか?姉上…ここに来る途中、私は焼けた村を見ました。それが……この山の麓だったのですが…」