今昔狐物語

「弥一!しの!いずこにおる!?」

声を張り上げる嵐華。

その後を追う阿多羅に水真馳。


「阿多羅!弥一としのの家は…!?」

「こちらです!」

案内しようと方向転換した阿多羅の足に、何かがぶつかった。

それは男性の死体だった。


「惨いことを…」

村人の死体を確認して阿多羅が呻く。

死体は焼けてこそいなかったが、背中をバッサリと斬られていた。

「刀傷…。もしかして、野盗でしょうか?」

水真馳の考えに嵐華が重々しい表情で肯定した。

「おそらくな。近頃、頻繁に野盗を見かけた記憶がある。……糞!!こうなる前に駆逐しておくべきじゃった!!」


怒りで握り締めた拳が震える。


その震えがピタリと止まったのは、とある焼け焦げた民家の中から二人の子供の死体を見つけた時だった。


 
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