今昔狐物語
言葉に、ならなかった。
目の前の光景が受け入れられず、怒りも嘆きも悲しみも吹き飛んだ。
「弥、一…?」
炎に飲み込まれたのであろう二人の死体は、生前の面影をほぼ失っていた。
「しの…?」
黒焦げの焼死体は沈黙を守ったまま、嵐華の腕の中でボロリと崩れた。
「あ…あぁ、ああああっ!!!!!」
崩れ落ちるそれを否定するように、嵐華は身体全体で二人の肉体をきつくきつく抱きしめた。
「やいちぃ!!しのぉ!!」
叫んだら、天にいる二人に届くだろうか。
「何故じゃあ!!何故、人は人を殺す!?平安の世においても戦乱の世においても、人は人を傷つけ奪い殺す!!約束された明日など、誰にもありはせぬのじゃっ!!」