今昔狐物語

「何?誰かいるの?」

ちょっと気になった蛍。

詳細を知ろうと、同僚に声をかける。


「蛍!あんたも見てみなよ!素敵な殿方が拝めるよ!」


そう言われては見てみたくなる。

蛍は「どれどれ」と襖の隙間を覗き込んだ。



(うわあぁ…。綺麗…)


それが水真馳を見た彼女の第一印象だった。

色素の薄い柔らかな長髪。

優しげで紳士的な微笑。

女性を虜にするために生まれたような顔立ち。

これ以上ないくらいの美青年が、そこにいた。


「どうよ、蛍。目の保養になるだろう?私ら女郎より綺麗さ」

蛍の周りにいた女達が再び話し出した。

「本当にねぇ。あの髪も、白髪なんて普通なら年寄り臭くてごめんなのに…。あの旦那だと神秘的で、逆に似合ってるんだから不思議だよ」


 
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