今昔狐物語
現代の都会って奴はどこを歩いてもザワザワしている。
今風に合わせて短く切ってみた茶髪をかき上げながら火叉七(ホサナ)は、もう何度目かわからない溜息を吐き出した。
すれ違う人の波が鬱陶しい。
そして…。
「腹減ったぁ…」
ギュルルと鳴る自分のお腹を見つめて涙がホロリ。
もう駄目だ、お腹が限界と内心叫びつつ大都市東京の街をフラフラ歩いていた時だった。
「きゃっ」
「うわ!」
横を歩いていた女性が火叉七の方によろけてきた。
どうやら急ぎ足の男性にぶつかられて押されたらしい。
咄嗟に女性を受け止めた火叉七は澄まし顔で去って行く男性の後ろ姿をキッと睨む。
「おい貴様!」
人にぶつかった上、謝りの言葉も無しかと文句を言おうとした瞬間。
「いいんです…!私は大丈夫なんでっ」
慌てた様子で女性が火叉七を制した。
「けど!あの野郎のせいで転びそうになったんだぜ!?」
「こんなこと、人混み歩いてればよくありますから…慣れてるんで平気です」