今昔狐物語
しかも、遊真は――。
「帰ったぞー」
その時、父親の快活な声が戸口から聞こえてきた。
「ただいま」
続いて、遊真の落ち着いた声がした。
「お帰りなさい。お父さん、遊真」
ゆきは二人を笑顔で出迎えた。
遊真はゆきを見つけると、離れていた時間を埋めるようにギュッと抱き着く。
その行為を心地好く感じながら、ゆきは上を向き、夫の顔を覗き込んだ。
若いのに、雪のように真っ白な髪。
明るい瞳。
これが遊真が警戒されるもう一つの理由だ。
遊真はこの普通でない容姿ゆえに村人達から毛嫌いされている。
ゆきの父親もその一人だ。
それなのに、娘と遊真の祝言を許したのは、母親の必死な説得と遊真の誠実な態度の賜物である。