今昔狐物語
「い、や…いやぁあああ!!!遊真ぁああ!!!」
「うるせぇぞ。黙れ!」
バシッと頬を叩かれる。
けれど、頬の痛みがなんだ。
遊真は、もっと痛いのだ。
刺されて血を流している遊真は、もっと…。
(私の、ために…)
やる瀬なさにゆきが俯いて唇を噛み、涙を零した時だった。
「な、なんだ!?」
「こいつ、人間じゃねぇぞ!」
「狐!?でっかい白狐だ!」
倒れた遊真を見て口々に叫ぶ野盗達。
「え?」
ゆきは耳を疑った。
(でっかい、白狐…?)
もう一度、遊真の姿を確認する。
そこには――。
「あ、ああぁ…」
見間違うはずがない。
(お狐様…!!)
そこには、子供の頃よく社で見かけたあの白狐がぐったりと横たわっていた。