今昔狐物語
(遊真!遊真遊真!貴方だったのね…!やっぱり貴方が…あの社の、神様だったのね)
捧げた自分の握り飯を食べていたのは、やはり遊真だったのだ。
きっと、あの雨の日もそれだけのためにわざわざ社を訪れたのだろう。
神を信じるゆきを、喜ばせたい一心で。
「まさか狐だったなんてな」
「俺達ゃ化かされたのかぁ」
「んなこたぁ、どうでもいい。皮を剥いじまえ」
この会話にゆきはハッと我に返った。
「駄目!!遊真…!!」
重傷で動けない白狐の遊真に刃をあてる彼らを見て、ゆきは羽交い締めにされた腕をバタバタと動かした。
「おい!暴れ…痛っ!」
押さえつけていた男のすねを思い切り蹴りつけ、自由となったゆきは愛しい夫のもとへと駆け出した。