今昔狐物語

「ゆき…」

ぐらりと遊真の上に崩れたゆきの身体。

まるで自分が遊真を守ると言うように。


「ゆき…ゆきぃい!!!!!」


イノチノ、キエユクオトガスル。


「ゆき!!ゆきっ!!」


遊真は狐の姿のまま起き上がり、必死に彼女に呼びかけた。


首からの出血が酷い。

このままでは、ゆきは…。


「~っ、貴様らぁあ!!!!」


「人」とは、友好的な関係を築く相手。

そう信じて生きてきた。

しかし――。


「ぎゃああ!あ、熱い!」

「ひっ、ひぃい!!」


初めて遊真は、人間を手にかけた。


「爆ぜよ、我が怒りと嘆きの炎よ!!この愚かな人間どもを、跡形もなく燃やしておくれ…!」


赤い赤い狐火が燃える。


白狐の強大な力が、全てのものを灰と化す。


 
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