今昔狐物語

「薬草?」

「はい。母ちゃんは病気で、この山の奥に病に効く薬草があると聞いて、探しに来てて…」

どうやらこの兄妹は母親のための薬草探しで、夕暮れ時まで山にいたらしい。


「して、薬草は見つかったのかえ?」

「はい!ここに!」

弥一は懐から摘んできた薬草を取り出した。

「ちと見せてもらえんか?」

素直に手渡した弥一。

嵐華はそれを金色の瞳で探るように見つめた。

そして、一言。


「これは毒草じゃ」

「毒草!?」

「まこと、これは毒の草ぞ。薬となるものなら明日までに我が用意しよう」

驚愕し顔を青くする弥一に、嵐華は事もなげに言った。

「そんな!助けていただいた上、薬まで頂戴するなんて…できません!」


 
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