今昔狐物語
人間のような暮らしをしているが、彼らは――。
「嵐華様、お忘れなく。我々は狐なのですよ?しかも貴女様は神位をもつ黒狐!人と馴れ馴れしくするのは如何なものかと」
阿多羅のお小言に嵐華は「また始まった」と言わんばかりの表情をした。
「我は人を好いておる。助けてやるくらい良いではないか」
「しかし…」
「ふっ…相も変わらず頭の固い男よの、阿多羅」
美しき黒狐は阿多羅に蕩けるような微笑を送った。
「そのような所も愛してやまぬ」
「嵐華、様…」
阿多羅の表情が一気に強張った。
見つめ合う二匹。
先に静寂を破ったのは嵐華の強い思いを秘めた声だった。
「阿多羅、我に子を宿せ。そなたの子なら我は産める」
「な、なりません!いつも言っているでしょう!俺と貴女様では身分が…」