今昔狐物語
「ならば明日、そなたをいただくぞ。良いな」
「いただ…!?先程から思ってましたが、嵐華様。積極的過ぎではございませんか?」
耳まで真っ赤な阿多羅とは対照的な嵐華の白い頬が、心外だと言わんばかりにぷくっと膨らむ。
「そなたが逃げ腰だから我が攻めになるのじゃ。雄ならば我を押し倒してみんか、この根性なし!」
「しー!お静かに。隣まで聞こえてしまいますっ」
従者の忠告に主人は冷静さを取り戻し、抱き着いていた胸から離れた。
「わかった。今宵は辛抱してやろう。だが、絶対絶対絶対絶対…!!明日は逃がさぬからな?」
不敵に微笑む嵐華。
その微笑はどことなく彼女の兄、飛牙に似ていた。