今昔狐物語
翌朝、弥一は人の声で目を覚ました。
「弥一!弥一!」
誰かが自分を揺する。
「う…ん?」
「弥一、気づいたか!」
目の前にいたのは父親だった。
「あれ…?父ちゃん?なんで、ここに?」
「何言ってんだ、弥一!昨夜は心配したんだぞ!?おめぇ達、一体どこに行ってたんだ?」
ここで弥一は気がついた。
今、自分が座っている場所は、あの女性の屋敷の室内ではなかった。
よく見知った粗末なわらぶき屋根の家。
自分の家の出入口の横だった。
目を丸くする弥一。
一緒にいるはずのしのを探すと、隣ですやすや眠っていた。
「父ちゃん!俺達、俺達な…山の中で鬼に会って…それで…!」
弥一は昨夜のことを父親に詳しく話した。