幸せの証

発情期

「あたしのカレシってね―――♪」

「会ってソッコー押し倒してくるの~。困っちゃう~♪」


「オマエの女って胸でかいじゃん。何カップ??」

「さぁ??片手で片乳つかめねーくらいでけぇよ♪」

「すっげー!!」

教室中のあちこちからこんな会話が聞こえてくる。

(発情期の犬や猫じゃあるまいし)

私はあきれて深いため息をついた。

「なーにため息なんかついてんの!」

そういってあたしの背中をばしばし叩いてくるリョウちゃん。

「痛いよ、リョウちゃん…」

「幸せ逃げてくよぉ?」

「だって…」

「それにしても、まわりはやることしか頭にないのかねぇ?高校生なら健全なつきあいをしろ!」

「例えばぁ?」

「図書館で一緒に勉強とか」

「今ドキそんなのいないよ!仮にいたとしても、手はペンもってもう片方の手は机の下で動いてんだよ??」

「・・・。そこまで妄想できるあんたはすごいよ。」

今度はリョウちゃんがため息をついた。

「妄想じゃないもーん。見たんだもーん。」

「図書館で?」

「そう!」

「学校の図書館でやるとはなんて許しがたい!!」

「どうせやるなら、屋上か保健室かトイレでしろ!!ってね♪」

「こらー!サヤー!!」

真っ赤になったリョウちゃんがあたしを羽交い絞めにしてくる。

「ぐるぢ~」

(トイレ・・・ね。自分でいっといてアレだけど、不衛生よね。それに、そんなところでしたがるバカ共もいるし)

リョウちゃんはやさしいから、あのことを話せばきっと・・・。

泣いてくれる。
怒ってくれる。
あたしの気持ち、わかってくれる。

でも・・・。


同情はいらないの。
同情されたって変わらないの。

傷つけられた心と身体は、もう元には戻らない。


「サヤ!もうエロ発言禁止ー!!」

「えー!!」


リョウちゃんと戯れながら、私の顔は、アイツらのことを思い出して凍りついていた。
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