人形の妹と王子の兄
「圭はいねえ。
あいつはもうここにはいねえから」
「…いないの?」
「そう…だ。
可憐、圭は引っ越した」
「……え…」
潤んだ瞳がさらに潤んで、
しゃくりあげた肩や
鼻が赤くなって
俺の袖をつかんだ手が震えた。
「…圭に…直接、
お前が電話してみろ」
好きな女を置き去りにするなんて
残酷な男だぜ。
ピンク色の携帯のボタンを押して、
可憐は泣き続けた。
だが、あの男は通話に出なかったんだ。