私の好きな人は好きな人がいました

葵は私の頭を撫でながら困ったように笑った。


「わたしじゃ、ダメなの…？」


辛くなって、

悲しくなって、


涙がこぼれそうになる。


「悪い、お前じゃダメなんだ。俺の中で、女の子は紅音だけだから。たくさん傷つけたよな、ごめんな。

…今度はお前を一番に見てくれる男を好きになれよ。」


そういって、優しく微笑んだ。


悲惨だね、


初めて見せた優しい顔は、

私がふられた時の表情だなんて。


私の頬には涙が伝う。


でも、なぜかすっきりした。


「ありがとう、きちんとふってくれて」


私は、今までで一番の笑顔でそういった。


「おう。」


葵も静かに笑った。


…大好きだよ、今でも


そう簡単に諦められるほど単純な気持ちじゃないの。

でもね、


そのうち言えるような気がする


『大好きだったよ』


ってー…