SCANDAL××!!
「こんばんは〜」
玄関のチャイムの後に聞こえる低い声。
これは…
「成海さん!」
「リコ、久しぶり」
「成海さんも久しぶり!
ご飯できてるから入ってはいって」
「うん、おじゃまするね」
成海さんとは、二つ上の幼馴染のお兄さん。
そして…
「あ、これ」
「うん!
カルテットの特集みたよ」
「ありがとう。
俺、恥ずかしいこと言ってなかった?」
「ううん、全然!
かっこよかったよ」
そう、成海さんは、カルテットのボーカルを務めている。
わたしと成海さんの親同士の仲が良く、現在両親とも海外赴任していて一人暮らしの成海さんはこうしてうちにご飯を食べに来たりする。
今やすっかり都会に染まった成海さんが、たまにこうしてこっそり帰って来るなんて、近所の人は知らないと思う。
「そうだ、リコ」
「うん?」
「今度ツアーでこっちにも来るから、ライブ観にこないか?」
「行くいく!行きたい!
…でも、チケット倍率高いよね」
ファンクラブ入ってても、チケットはなかなか取れないって由香が言ってたっけ。
「そんなの俺が用意するよ、リコのために」
「成海さん、ありがとう!」
「いいよ、いいよ。
リコは俺のかわいい妹みたいなもんだしな」
「またそれ言う〜!
成海さんって絶対シスコンだよね」
「じゃ、自力でチケット取って」
「あ〜、うそうそ!
ごめんなさーい!」
「分かったから」
きっと、わたしは成海さんに恋してる。
でもこれは、叶わない恋。
相手は幼馴染であり、芸能人。
しかも、いつもわたしは妹として見られる。
いつかこの幸せな時が消えてしまうのかと思うと、ほんとこわい。