真白な彼女

回想

あの時、僕は、大学の駐車場にいた。
まだ大学に着いたばかりで、車から出て、校舎に向かう所だった。
聞いた事がある声が、聴こえて来る。
少し脅えた声で。

『はい…はい…。え?いや、でも…。そんな……お幾らですか?500…そんな額…無理です…。』

小鳥遊の声だと気付くのには多少、時間が掛かった。
駐車場は、林で囲われている。
小鳥遊は丁度、僕が停めた、車の後ろの林の中で話していた。
趣味は良くないと思うが、僕は自分の車の影に隠れて、聞き耳を立てていた。

『もう少し待って下さい。来週の日曜日に……えぇ…一回、話し合えませんか?お願いします……はい…では…。』

小鳥遊は電話を切り、林から出て来た。
僕は、小鳥遊にバレ無いように息を殺して、車を使い小鳥遊の死角になるように身を潜めた。
何とか気付かれないうちに、小鳥遊は駐車場を去って行った。


回想終

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