花とミツバチ



「…うん、じゃあお邪魔してもいい?」

「はい、もちろん!じゃあ急ぎ足で…あ、先輩はこれかぶってくださいね!」



すると千葉くんは着ていたモッズパーカーを脱ぎ出し、私に頭からすっぽり隠れるように羽織らせた。



「こうすれば少しは濡れないはずですから」

「え?でもこれじゃ千葉くんが…」

「俺は全然平気です!高校の頃友達と半裸で雪合戦しても一人だけ風邪ひかなかったくらいなんで!」

「……」



それはそれですごいけど…。

でも、と腑に落ちない私にその手はポンポンとパーカーの上から私の頭を撫でる。



「俺が勝手に先輩のこと濡らせたくないだけなんで、かぶっててください」

「…わかった」

「じゃあ行きましょうか」



どうしてか、

いつもより若く見えるのに、いつもより頼もしく見える。



その手に腕を引かれ、雨の中を駆け出した。





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