花とミツバチ
「お、藤田。まだいたのか」
「…梶原課長」
そこから姿を現したのはファイルを数冊手に抱えた彼。突然のその姿に、思わず心臓はドキリと跳ねる。
「残業?お疲れさん」
「課長も、こんな時間まで会議ですか?お疲れ様でした」
「ほーんと、お偉いさんの長い話にお疲れだよ」
やれやれと笑いながら、その手は適当にファイルを机に置いた。
彼の細められる目とこういう素直な物言いが、好きなところの一つだ。
「今日は真っ直ぐ家帰れよ。あんまり外泊ばっかりしてると、親御さんに心配されるぞ」
「もう外泊して心配されるような歳じゃありません。寧ろあんまり早く帰ると『そういう相手もいないのか』って心配されます」
「あはは、それはそれで悲しいな」