花とミツバチ



「コーヒーで大丈夫ですか?」

「うん、ありがとう。服まで借りちゃってごめんね」

「いえいえ、俺のでよければ!じゃあ俺も風呂入ってくるんで、適当に部屋でくつろいでてください。あ!でも探らないでくださいね!ベッドの下とか!」

「はいはい…」



千葉くんはそう言ってタオルを手にお風呂場へと向かう。

一方の私はコーヒーを受け取り通された部屋で、ベッドとテーブルの間に腰をおろした。



(千葉くんの、部屋…)



意識して見回してみれば、割と綺麗に片付けられたその部屋。

小さめのテレビと、水色のカーテン。壁にかけられたのは見慣れた数枚のスーツたち。
本棚にはやや雑に雑誌や本が詰め込まれているものの、一人暮らしの男の子にしては片付いている方だと思う。



不意に漂うシトラスの匂いが、彼が毎日ここにいることを示すかのように鼻をくすぐる。



< 121 / 261 >

この作品をシェア

pagetop