花とミツバチ
「…つまり、そういう藤田の顔が可愛いってこと」
「…、」
囁いて、ゆっくり重なる唇。
オフィスの真ん中の二人、キスをするうちに自然と体は抱き締め合う。
この体を包む力強い腕と、その体にすがりつく指先。触れては離れ、また触れては深く口付けた。
「…、…」
どれほど繰り返しただろうか、ようやく離れる唇を惜しむ私に、その腕は躊躇いなくほどかれる。
「今日は、これだけ」
「…はい、」
「じゃあ気をつけて帰れよ。また明日」
そして宥めるように頭をぽんぽんと撫で、課長は変わらない笑顔で鞄を手にしてオフィスを後にした。