花とミツバチ



「…けど、ありがとね」

「へ?」

「あの時、間に入ってくれて」

「……」



手を握られたあの時、私一人ではきっとほどけないままだったから。



「…あ、タクシー来た。送るよ」

「へ?それを言うなら俺が送り…おっとっと」

「立つのもままならない人間が何言ってるの」



いつもなら俺が!と譲らないんだろうけれど、大分酔いがまわりつらいのであろう彼は大人しく私に支えられたまま、店の前に停まったタクシーに乗り込んだ。

そしてタクシーを走らせしばらくして着いたのは、先日も来たばかりの白いアパート前。



ーバタン、ブロロロ…

「千葉くん、大丈夫?」

「はい…すみません…」



タクシーの中で眠っていた彼の足は先程より余計にフラフラと不安定によろける。

そんな千葉くんの体を支え歩くものの、その体の重さにこちらまでよろけてしまう。



(重い…細く見えても男の子だなぁ)


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