花とミツバチ
「千葉くん、家の鍵は?」
「ポケット…」
「ポケット?ちょっと失礼するね」
何とか部屋の前まで着いたものの、部屋を開けなければ入れない。失礼と思いながら私は彼のスーツのポケットへ手を入れる。
(上着じゃない…ってことは、ズボンの方かな)
そしてズボンのポケットへそっと手を入れたその時、彼の体はバランスを崩し前へよろけた。
「わっ!千葉くん…」
「…、」
それを支えようとしたけれどやはり重みには勝てず、私は千葉くんとドアの間に挟まれる。
「……」
「…、…」
目の前にはドアに手をつき虚ろな目でこちらを見る彼の顔。
漂うお酒の匂いと、酔いのせいか赤らむ頬。それらと触れそうな距離に、ドク…と心臓が鳴る。