花とミツバチ
「すみません!少し目を離した隙にうちの娘が…」
「あ…すみません、ぶつかって転んじゃって」
「もう理央!だから走っちゃダメっていつも言ってるでしょ!」
「…あれ、藤田と千葉?」
「…!」
当然続いてやってきた梶原課長は、驚いたようにこちらを見る。
「…梶原、課長…」
「お前らどうした?こんな所で二人で」
「?あなた、知ってる方?」
「うちの会社の部下だよ。こっちが藤田で、こっちが千葉」
「あら…いつも主人がお世話になってます」
「……」
至って普通に紹介をする彼に、私も小さく頭を下げた。
「…こちらこそ、お世話になってます…」
精一杯、平常心を装い絞り出す声。そんな私にも彼は焦りも動揺もしない。