花とミツバチ



(…寒い)



びゅう、と吹く冷たい風が薄着の肌に少し痛い。

そうしていると、眩しいホールの中からグラスを二つ手にした梶原課長が現れた。



「お待たせ。シャンパンでいいか?」

「はい、ありがとうございます」



シャンパンの入ったグラスを受け取り、彼のグラスと小さく乾杯をする。一口飲めば、喉を通る炭酸の刺激。



「酔っ払っても瓶で俺の頭殴るのはやめてくれよなー」

「殴りませんってば。もう、千葉くんは変な誤魔化し方ばっかりして…」

「けどそうやって、お前のことを守ってるんだよな」

「……」



彼が目を細め見る先には、会場の真ん中で福井社長の隣で笑顔で接待している千葉くんの姿。

その守ってる、の言葉にどれほどの意味が込められているのか、私にはわからないけれど



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