花とミツバチ
「…千葉くん、お願いがあるの」
「へ?お願い?」
「お願い!さっきのこと、全部忘れて!!」
もう誤魔化したりすることは諦め、私は薄暗い階段の上で千葉くんに向かって思い切り頭を下げた。
「へ…?」
「正しくないことだってわかってる…けど、私それでも課長のことが好きなの!!」
「……」
不倫を内緒にしてほしい、なんて最低だと思われるだろうな。見損なわれるだろう。
だけどそれでも、あの手を失いたくないの。
「…嫌です」
「!?」
「俺は、さっき見たこと忘れません」
「……」
ところが、少しの無言のあと千葉くんから発せられるのは無情な一言。