花とミツバチ
「…ん…」
「先輩、起きました?」
「…千葉くん…おはよ、」
「おはようございます」
キスをするうちに目を覚ました先輩に、俺は笑ってその体を抱きしめる。相変わらず細いその体は、少し低い体温。
「…今何時…」
「んーと…6時半すぎ」
「6時半…、!仕事!!」
ところが彼女は微睡む暇もなく、ハッと目を覚まして俺の顔を押しのけ飛び起きた。
「そんなに急がなくても…うちから会社そんなに遠くないし普通に支度すれば間に合いますよー?」
「女の支度の時間を男と一緒にしないで!」
「はいはい、すみません」
バタバタと着替え洗面所に向かう後ろ姿に苦笑いしながら、俺は起き上がってはキッチンに向かいコーヒーを入れ始める。
女の人は大変だなー…。
そう思いながらも、目を向けた部屋の隅には置かれたままの彼女の着替え数枚。泊まった翌日もそのまま出勤出来るように、と置いてある分だ。
そんな些細なものにも、恋人らしさを感じて付き合っているのだと実感する。
(…幸せだ)