花とミツバチ





『千葉くん、ここ間違えてる』

『え!どこですか!』

『二行目。計算ミス』

『あー…すみません』





冷静で的確、笑い混じりで言うわけでもないから余計に冷たく感じる。そんな彼女を、俺も最初は怖くて近寄り難い人だって思った。けど





『あれ、藤田先輩残業ですか?』

『うん。仕事終わらないから』

『確か昨日も…一昨日も残業してませんでした?』

『今週は毎日してるかもね。まぁそれだけ営業が注文取って来てるってことだから、いいんじゃない』

『……』





残業しても文句ひとつ言わないし





『先輩!これお願いします!』

『はい。…うん、大丈夫』

『直しナシですか!?』

『うん。ミスないよ』

『やったー!初ノーミス!』

『…うん、偉い偉い』





ちゃんと出来た時には褒めてくれる。

そんなひとつひとつが心に残って、気付いたら目で追うようになっていた。

気付いたら、好きになっていたんだ。




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