花とミツバチ



だけど、のちに俺は知る。その目が常に向く先を。





『藤田せんぱー…』

『……』





仕事中、時々彼女がぼんやりしている時がある。その目の先には、俺たちの上司・梶原課長。

気さくで緩い雰囲気の人で、だけどいざという時は年長らしさを発揮する、あれが俗にいういい男というのだろう。

そんな梶原課長を彼女はいつも熱心に見つめていて、きっと好きなんだろうなってことだけはわかった。



梶原課長に奥さんも子供もいることは新入りの俺でも知ってるくらい有名だから、叶わないことはわかっているんだろう。

いつも切なそうな顔で見つめて、こらえるように俯く。



好きなんだろうな

想って、でもどうにもならなくて、堪えているんだろう。

その切ない目を見ると、俺の心も切なくて





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