花とミツバチ
「奥さんですか?」
「あぁ。今日は何時に帰って来れる?ってさ」
「仕事なんてとっくに終えてるくせに…そのくせ梶原課長の嘘は、自然で嘘に聞こえませんね」
「褒めてる?それとも嫌味か?」
ぼそ、と私が呟いた言葉にははっと笑ってみせながら、彼はベッド脇のサイドテーブルに携帯を置いてこちらに近付きキスをした。
頬を優しく撫でるのは、まだ熱っぽいその手。
「隣で堂々と電話なんてして、私が声でも出したらどうするんですか?」
「ん?それは心配してないよ。藤田はそういう子じゃないって、分かってるから」
「……」
見透かすようなその瞳に反論する言葉は出てこず、つい黙る。
そんな私にまた笑みを浮かべ、体を起こしてベッド周りの床に散らばった服を拾い着替え始めた。