花とミツバチ



(…そんな風にお願いされたら、断れないし)


日頃、決して押しに弱い方ではないと思う。けれど彼の仔犬のような目は、どうも私を操作するのに強いらしい。



「へへー、藤田先輩とコーヒータイムだ」



千葉くんはそう嬉しそうに笑い、私の隣の空いているデスクに寄りかかるようにして自分のコーヒーをカチッと開けた。



「あれ…けど食べる時間も惜しいってことは、藤田先輩お昼抜きですか?」

「うん。買いに行く時間もなさそうだし」

「ひぇー、きつい…あ!じゃあこれ食べてください!」

「?」



そう彼が差し出したのは、手にしていたコンビニの袋。白いその袋からは中のサンドイッチが透けて見える。



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