花とミツバチ
ー会社から少し出た先の大通りで拾ったタクシーで向かうのは、ラブホテル…ではなく、普通のホテル。
寧ろ高級そうな所がほとんどで、その理由も彼曰く『どうせするなら良い所でしたいし、誰かに見られても食事してたで誤魔化せるから』だとか。
そんなことを悪びれず言えるあたり、やっぱり手慣れているのだと思う。
浮気も不倫も、きっと初めてじゃないんだろう。今だって、不倫相手は私一人なんかじゃないかもしれない。
それでもやっぱり、私はその手を拒めない。
「…藤田、」
「…ん…」
そうして今日もやってきたホテルの一室で、私と彼は欲に溺れる。
抱き締めて、キスをして、ベッドに倒れ込み脱がし合う服。触れた肌は互いに熱く、汗と体液が混ざり合う。
「あっ、やっ…かちょ…う、」
「…気持ちいい?」
「ん…すごく、」
「…可愛い、」
熱く溶ける吐息に、気持ち良くて、彼でいっぱいになって
(…なのに、)
今日はどうしてか千葉くんの笑顔が頭にちらついて、心の奥に引っかかる。
『藤田先輩!』