花とミツバチ
(…何となく、気まずい)
気まずさの理由は昨夜の罪悪感からか、なぜか頭からその笑顔が消えなかったせいか。
そうパッと視線をそらす私に、彼は『?』を浮かべ首を傾げた。…かと思えば、突然顔をずいっと近づける。
「!」
不意を突かれ思わずドキッと動揺すると、次の瞬間彼は鞄から何かを取り出して私の上から下までシュッシュッとスプレーをふりかけた。
「わっ、えっ、何?」
「俺この香水好きでよく使ってるんです。いい匂いじゃないですか?」
「へ?うん…シトラスのいい匂い」
「でしょ?だからお裾分けです」
「……」
たちまち全身を包む、シトラスの爽やかな匂い。千葉くんはへへっと笑って隣に並んで歩く。