花とミツバチ
3.絡む蔓
5.落ちたカップ
新入社員として、まだまだ下っ端だった頃のこと。
ある時、私は両手いっぱいに荷物を持って会社の中を歩いていた。
『うわー、大変そー』
『重そうだね』
ダンボールに入れた書類や備品、それらは重くて大きくてすごくすごく大変で、そう言うだけで手伝ってもくれない人ばかりで、頼ることも出来なかった自分。
『大丈夫?』
でも、彼は違った。
『うわ、何だその荷物の量!重いだろ』
『…平気です。一人で持てます』
『無理するなって。いいよ、俺が持つから』
『けど…』
『あ、じゃあこうしよう。俺が藤田の荷物を持って、藤田が俺の荷物を持つ。交換ってことで』
『…って、梶原課長の荷物なんてファイル二冊じゃないですか』
『いいからいいから。はい、交換』
笑ってそう手を差し伸べてくれた。
その優しさが、好きだった。