彼氏は11才!?
「ちょっとアンタ達!帰るわよ!」
スパーン!と障子が勢い良く開き、入って来た母さん。
その後ろには父さんと紅ちゃんが居た。
「あれ。紅ちゃん、荷物はそれだけでいいの?」
「先月まで海外で暮らしてたんだ。この屋敷に必要なものなんて無い」
小さな鞄だけを持った紅ちゃんに問いかければ、そっけない言葉が返ってきた。
「あーぁ、貴重な日曜日だったのにー」
立ち上がる正宗を追い、私も立ち上がり仏間を後にした。
屋敷を後にし、車が停めてある駅までの道のりを歩く私達。
辺りはすっかり夕焼け色に染まっている。
私は横を歩く紅ちゃんの顔をチラリと見た。
洋服に着替えた紅ちゃんはやっぱり顔だけは可愛い。
だけど、子供特有の表情の豊かさは無かった。
「ねぇ、紅ちゃん。大丈夫?」
やっぱり両親が死んで、悲しいのかな。
大人ぶって強がっているのかも知れない。
そんなことを思いながら私は紅ちゃんに訪ねた。
「何が」
返ってきたのはやっぱりそっけない声。
「何がって…お父さんやお母さんが死んだんだよ。平気なの?」
「別に何とも思わない」
えぇぇ…マジかよ。