彼氏は11才!?
「悲しみを抱くほど、両親とは親しく無かった」


寂しさも悲しさも感じさせない表情。

あぁ、本当に何とも思って無いんだなぁ。


紅ちゃんが育った環境は私なんかが想像出来無いくらいに冷たい場所だったんだろう。


「まぁ、アレだ。まだ11歳だし、人生はこれからだぞ」

「そうよー。ウチは騒がしいから覚悟しておいてね」

「母さんの料理は美味いぞ。紅一郎君もきっと気に入る」


正宗、母さん、父さんが振り向いて紅ちゃんに声をかけた。

ほんの少し。
ほんの少しだけ、紅ちゃんの目が緩む。



「帰ろう、紅ちゃん」

「うん」


差し出した私の手に紅ちゃんの手が重なった。
信じられないくらいに小さな手。
少し冷たい。


こうして私達に家族が増えた。










でも、この時の私には想像もつかなかった。


命を脅かす大事件に巻き込まれることも、紅ちゃんが負ってきた深い深い心の傷も何も知らなかったのだ。








夕闇が紅ちゃんの背中に張り付いていた。





第1話 おわり
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