彼氏は11才!?
部屋の隅に蹲り、涙と鼻水でグチャグチャになった顔で私を睨む正宗。


いつも綺麗にセットしてある金髪はボサボサ、整った顔立ちも今は情けなく歪んでいる。



さすがに可哀想だなー、と思って謝ろうとした時。



トゥルルルル



電話が鳴った。



トゥルルルル
トゥルルルル



リビングの隅で自己主張を繰り返す電話。


「ぐす…っ、うぅ……、羽咲です…」


半泣きで受話器を取る正宗。
相手方はビックリだろう。


ん?


正宗の方がビックリしてるんだけど。


「はい。…はい、分かりました…母に伝えておきます」



ゆっくり、静かに受話器を置く正宗。
そして私を見る。

鼻水をいまだに垂らしながら。



「清彦おじさんと奥さんが事故で死んだって知子さんが…」


「清彦おじさん…」


神妙な面持ちの正宗。

世界が冷え、音の無い空気のが広がって行く。

ドクドクと高鳴る私の心臓。


渇く喉が水分を欲しがる。


<清彦おじさん…>



私と正宗の気持は恐らく一致しているはずだ。


「正宗…」

「姉ちゃん…」


呟くように弱々しい声で互いの名を呼ぶ。


そして、二人の声が重なった。
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