七都
 凛々子の頬を涙が伝った。

 たくさんあの子たちに伝えたいことがあった。けれど時間がなさ過ぎて、もう何を言っていいのかわからない。

 凛々子は祈った。

 神様どうか、あの子たちが幸せでありますように。

 あの子たちを襲う悲しみが、できるだけ早く癒えますように、と。

 せめて少しでも長くあの子たちの姿を見ていよう、そう思った瞬間、胸の中心を衝撃が走り抜けた。

 ふ、と全身から力が抜けた。

「おかあさん……!」

 叫ぶ七都を優花が強引に胸に抱き寄せた。

「見ないで。見なくていいの」

 きつく抱きしめられ視界を遮断された七都は、その腕の中から逃れようともがいた。

「離してっ」

「七都……」

 優花の腕をふりほどいた七都は、炎の中に崩れ落ちる凛々子の姿を見た。

「あ……」

 二、三歩あるいて、七都は膝から力が抜けたように、その場にぺたんと座り込んだ。





 直後、七都の絶哭の声が辺りに響いた。

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