君と私のたんぼ道
「じゃあ祈の部屋に案内するかねぇ。」

そう言っておばあちゃんはニコッと笑った。

私の部屋は2階の端っこだった。

部屋の大きさは6畳ぐらい。

全部が木ですごく木の匂いがして、心が落ち着く。

「ねぇ、おばあちゃん。散歩に行ってきていいですか?」

外の空気が吸いたかった。

私はいつからおばあちゃんに敬語を話すようになったんだろう。

「はい、行ってらっしゃい。」

「あ!俺も行く~!」

元気な声で言う空。

「行ってきます。」

私達は散歩に行った。

「なぁ祈!俺が色んなとこ、紹介したろか?」

「え、うん。ありがとう。」

「俺のお気に入りの場所に連れったる!」

お気に入りの、場所…。

そんな大事なとこ、私に教えていいのだろか。

そして空のお気に入りの場所に連れて行ってもらった。

「ここが俺のお気に入りの場所!」

ここには、いろんな小動物がいた。

「全部、捨てられてあってん、ひどいよな、捨てるなんて…だから俺が拾ったちゃ!」

「可愛い…。」

私は昔から犬が大好きだった。

「やろ!祈絶対喜ぶ思てん!」

「え…。私が…?」

私の…ため?

「おう!祈が!」

私の暗かった心に少し小さな光が見えた。

彼は言う、満面の笑みで。

「祈さぁこっち来てから1回も笑ってへんけん、ここ来たら笑ってくれるかな思てん!こっち来てから言うても1日もたってないけどな!」

空は「アハハ」って笑う。

「え!どうしたん、祈?」

いつの間にか私の頬には一筋の涙が通っていた。

いや、一筋じゃない。

きっとボロボロだ。

「あ、ありがとう…。」

私はこれを言うのが精一杯で泣く事しか出来なかった。

でもこの涙は悲し涙じゃ、ない。

あの頃の悔し涙じゃ、ない。

この涙は空が優しくしてくれて嬉しさの涙。

「祈、笑って?俺は祈の過去を知らん。でも祈には笑ってほしい。だから笑って?」

空の優しい声。

真っ暗な私の心。

この心、いつ輝けますか…?

「空、ありがとう。」
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