君と私のたんぼ道
来た道を帰った。

家に着いたときまたおばあちゃんが迎えてくれた。

「おかえりぃ。もう夕方やでぇ。」

そしてお風呂に入ってご飯を食べた。

私は今縁側にいる。

今は夏だから温度がちょうどいい。

「祈、もう夜遅いねんから寝いや。」

今は8時40分ぐらい。

「あ、はい。」

おばあちゃんは優しい笑顔で自分の部屋に戻って行った。

おばあちゃんの笑顔は心が落ち着く。

でも光も生きる希望もなくした私にそんな素敵な笑顔を見せていいのだろうか。

そんな優しくしていいのだろうか。

空も。

空も私にすごく優しくしてくれる。

ここに来て1日目だけど分かる。

空は自分の事より先人の事を考えてくれる。

すごく嬉しい、でも本当に私になんか優しくしてもいいのか。

こんな中途半端な気持ちで優しくされたら、少し心が痛む。

「祈…?」

後ろを振り向くと空がいた。

「どうしたん祈。なんか悩み事でもあんの?俺に話して…?」

また優しくしてくれる空。

涙が出てきた。

「え!何で、祈泣いとるん?」

初めてだから…

「初めてなの…こんなにも優しくしてくれるのが。初めてだから何て言ったら分んないし…、ごめんなさい、意味分んないよね。」

そう言って自分の部屋に逃げようとしたのに。

「待って!」

「え…?」

空は引きとめた。

「祈の気持ち分るよ。だから俺に話して…?」

空…。

優しすぎるよ…。

「…ありがとう…。でも大丈夫だから。本当に大丈夫だから…!」

涙を押しきって言えた言葉。

「そっか、じゃあおやすみ…!」

「おやすみ…。」

そう言って私と空は自分の部屋に入った。
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