モラトリアム

どうやら伶奈は5〜6人いる信号待ちの中で右から車がちょうど来たタイミングで誰かに押されたらしい。
幸い運転手がすぐに気付いて急ブレーキと急ハンドルでスピードを殺したのが良かったみたいだ。
そうじゃ無かったら今ここにはいなかっただろう。

しかし……押されたか…。

ふと伶奈の方に視線を向けて見た。

伶奈は僕が持ってきたリンゴを食べていた。

そもそも殺される様な覚えがあるのか?
いや無いだろう。
そんな娘じゃない。

通り魔みたいな奴がいるのか?
此の間、友人を亡くしたばかりだ。
気になるのが普通だろう。


敬太君?どうしたの?

いや、ちょっとぼーっとしてた見たいだ。もう帰るよ。
因みに誰が押したかなんて分かるはずないもんなぁ?

うん。さすがに分からない。
でも…私の真後ろに立ってたのって…女性だった気がするんだよね…。
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